だから電気はおもしろい

だから電気はおもしろい

だから電気はおもしろい 第4回電気と磁石の深〜い関係

山登りを初めて今年で6年目になった私。標高2千メートル以上の山に毎年挑戦し、2年ほど前からは、中国地方の山にも親しむようになりました。
中国地方の山は、四国に比べて険しい山が少なく、よく整備されているので登りやすいように思います。
特に私は、山陰方面がお気に入りです。古事記にまつわる山や、たたら製鉄の跡が残る山があちこちにあって、文化的にも楽しめます。
昨年3月下旬には、もう春だからと出かけたら、あたり一面が真っ白い雪という予想外の景色に驚いたこともありました。さすがに山登りは断念しましたが、そのかわりに蕎麦と温泉を堪能することができ、これ以降、続けて山陰の山々に登りはじめるきっかけにもなりました。
……こんなふうに書くと、いかにも山に慣れているように思われるかも知れません。でも実際は、そんなに体力があるわけでもなく、行動をともにする仲間のおかげで、何とか登頂しているような状態です。
他の人に迷惑がかからないよう、必要な装備は用意していますが、ナビゲーションは人任せ。自分用の地図は、いつもほとんど見ることがありません。
一人になってしまうと道に迷う危険があります。人に頼ってばかりではいけないなぁと考えてもいたのですが、ずっとそのままになっていました。
それが昨秋、「コンパス(方位磁針)の使い方を一緒に勉強しよう」と仲間に誘われたことから、ついにコンパスナビゲーションの世界に足を踏み入れることになりました(大げさ?)。
でも、コンパスはすぐには使いこなせず、本を読んだり、ネットで調べたり、購入先のお店の人に教えてもらったりして勉強しました。
コンパスは、単に方角を知るためだけでなく、進むべき道、現在地、見えている目標物などを正確に知るために使うこともできるのですね。
まだ実際の山登りには使っていませんが、手軽に持ち運べて、便利で、おもしろそうです。
併せて地図の読み方も勉強しました。国土地理院の地図を広げて、等高線の読み方やら、針葉樹や広葉樹などのマークやらを見る練習をし、小学生か中学生に戻ったような感覚でした。
あの時の知識は、こんなところで役に立つのですね。その当時は、思いもよらないことでしたが。
知らない土地で目的地にたどり着くためには、今の時代、ナビゲーションシステムもありますが、地図とコンパスが使いこなせたら良いですよ~(私は、まだまだですけど)。


ところで、コンパスのN極は、厳密には北極を指していないという話をご存じでしょうか。
地図上の北(北極の方向である真北)とコンパスの指す北(磁北)とは、違っているのです。
真北と磁北のなす角度は、「偏角」といいます。
偏角は、時間と場所によって異なり、日本では、西に4°~10°程度ずれています。
北に行くほど、ずれが大きくなり、沖縄ではおおよそ4°に比べて、北海道ではおおよそ10°になります。四国では、おおよそ7°ずれています。
「磁極」は一定の場所になく、少しずつ移動し、過去に遡って調べてみるとN極とS極が逆転していた時代もあり、地球の長い歴史のなかで、逆転は何度も繰り返されているとのことです。
ちなみに現在、カナダ北方にあるといわれる磁北極(北磁極ともいう)では、コンパスのN極は、真下を向くそうです。そして北極点でコンパスのN極は、北を向くことになります。
なお、地球の北はN極であると誤解しやすいのですが、コンパスのN極が北を指すのはS極に引かれるためで、地球の北はS極ということになります。
わかりやすい例えとして、地球は北がS極、南がN極の大きな磁石であるといわれています。
大きな磁石である地球の周りには、磁界(磁場)があり、磁力線は、南のN極から出て北のS極に入ります。
小さい磁石でも同じように、磁石のまわりには磁界があり、磁力線は、N極からS極に入ります。
実は、電流と磁界は切っても切れない深い関係にあって、電流が流れると必ずまわりに磁界が生じます。
この関係を表す法則は、「右ねじの法則」といわれますが、電流の向きを右ねじの進む向きとすると、その磁界の方向は、右ねじの回る方向になります。
また、コイルの中の磁界が変化すると、コイルに電流を流そうとする電圧が生じる現象を「電磁誘導」といい、この原理が発電機やモータに応用されています。


さて、このあたりで山登りに話を戻しましょう。
地図とコンパスを使って正確な方向を知るためには、事前に地図上へ磁北を指し示す直線を書き込んでおくと便利だそうです。
四国の地図なら、最初から上下に引かれている経線を基準として、左に7°傾けて引くと磁北線になります。
1本目の線が引けたら、その線を基準として、適当な間隔で2本目、3本目と並行に引いておけばOKです。
プレート付きの専用コンパスがあれば、簡単に作業できます。
7°程度のずれは、わずかのように思いますが、実際に磁北線を書いてみると、無視できないずれになります。
次回の山登りには、本格的に地図とコンパスを活用してみたいと思っています。
ただし、いいかげん歩くのが遅い私が、コンパスを出してもたもたしていたら、みんなにヒンシュクを買いそうですけど……。


電気理論の勉強をする際には、電磁気の話が必ず出てきます。
ところが私は、電磁気がいまだに馴染めず、話題が広がらないため、これまで原稿のネタにしないように避けてきました。
ところが、コンパスを手に入れたことがあまりにうれしく、ついつい書いてしまったら、避けてきた領域に入ってしまうことになってしまいました。
そして、偏角のことを調べていくと、地球の磁北極は動いているという話に行きつきました。
でも、なぜ動いているか、まだ確かなことはわかっていないようです。
地球の磁力線の話も、なぜ磁力線が発生するのか、はっきりしていないようです。
地球は案外、アバウトなんですね。なんだか親近感がわいてきました。