電気事故未然防止例

電気事故未然防止例232放射温度計で変圧器の異常を発見

愛媛支部 大洲事業所 中村 啓人

設備などの状況

暑い夏の日、ある食品製造工場で月次点検を実施した時のことです。屋外に設置されたキュービクルにおいて、いつものようにサーマルイメージ放射温度計を使って、機器や配線の温度を順番に測定していました。

発見時の状況と対応

動力用変圧器の低圧側端子部に放射温度計を向けたところ、モニターに発熱箇所が映し出されたのでハッとしました。1相ずつ測定してみると、通常ならほぼ同じになるはずの温度が、R相55℃、S相70℃、T相55℃となっていました。負荷電流は各相バランスがとれており、S相だけが15℃も高いのは、明らかに異常です。そこで、すぐに幹線の接続状態などを確認しましたが、問題はなく、原因は変圧器内部にあると判断しました。

お客さまに状況を説明し、「このまま温度上昇が進み、S相の焼損に至った場合は、工場の操業に影響するおそれがある。早急に、変圧器内部の点検のために停電をお願いしたい」旨をお伝えしたところ、この日の終業後に工場を全停電して点検できることになりました。

停電後、変圧器のフタを開けて中を確認すると、低圧側碍子の下側内部の通電ボルトとS相コイル二次側銅バーを接続しているナットに緩みがあることがわかりました。ナットの緩みにより、接触抵抗が増加し、発熱したことが原因だったのです。早速、ナットをしっかり締め付けし、他に異常がないことを確認して受電しました。

翌日、再度訪問し確認すると、温度異常は治まっており、一安心しました。お客さまからは、「キチンと点検してもらっているので、安心して電気を使用できます」と感謝の言葉をいただくことができました。

今後の取り組み

今回のような変圧器内部のナットが緩むというのは、めずらしい事象です。
これからも設備の異常を見逃さず、適切に対応していくことで、電気事故の未然防止に努めてまいります。