定期調査時の体験談

調査業務における体験談 vol.85民家の古い離れの部屋で……

愛媛支部 八幡浜事業所 楠野 和弘

冬の晴れた日に、海辺の集落で4年に一度の電気の安全調査をしていた時のことです。

ある民家を訪問し門から声を掛けると、80代くらいの女性が出て来られました。安全調査に伺ったことをお伝えすると、快く迎えてくださいました。その家は築20年ほどの母屋と奥にそれよりも古い離れの2軒の建物があり、まず母屋と離れの屋外点検と漏れ電流測定をしましたが異常はなく、点検結果は良好でした。

次に、屋内配電盤を点検し異常がなかったので「点検結果は良好です。屋内で何か気になるところはありませんか?」と尋ねると「特にないです」とのことでした。

そこで、次の安全調査は4年後であることを告げ、門から出たところで調査業務用端末機に結果を入力していました。

すると、後ろの方から「ちょっと待って~」と呼ぶ声がしました。振り返ると母屋2階の窓から、先ほどの方と年齢は同じくらいで別の女性がこちらに手を振っていました。「すぐに降りま~す」と言うので玄関まで戻って待っていると、「ちょっと見てほしいとこがあるんよ。以前触った時にビリビリしたのであれから触ってないんじゃけど」と言って奥の家の方へ案内されました。「この奥の部屋なんじゃけど」と言って、先ほど、分電盤の点検で入った部屋の更に奥の部屋に案内され「ここなんじゃけど」と、天井からぶら下がっているコードを指差しました。コードの先にはキーソケットが付いており電球は外していました。かなり年季の入ったコードで、煤がいっぱいで蜘蛛の糸が絡みついており、よく見ると表面の布がほつれ、ゴムの被覆が剝がれて芯線(電線)が見えていました。お客さまに「これは危ないですね。かなり危険です」と言うと、「怖くてずっと使ってなかったので忘れよったけど、どうしても部屋に入らないけんときは懐中電灯使いよったんよ」と言われました。「このままでは危ないので、すぐに電気屋さんに来てもらって交換してください」と言うと、「もう使うことはないんじゃけど…」と言われたので、「よろしければ撤去しましょうか?」とお尋ねすると「お願いします」とのことでした。「後で、やっぱりあった方が良いと思ったら電気屋さんにお願いしてコードを付けてもらってください」と伝え、その回路だけ停電し、検電して電気が来ていないことを確認して、劣化したコードを撤去しました。

手にとって見ると、柔らかいはずのコードは枯れ木の枝のようにカチカチで被覆もあちこちボロボロでした。それを女性に見せると「こんなのがぶら下がってたんですね。除けてもろてよかった。ありがとう」と感謝されました。

今回は、お客さまへの問診から不良箇所を発見し、危険箇所を取り除いたことで、安心して電気をお使いいただけることとなり良かったと思います。

今後も「お客さまのための電気の安全調査」を心掛けてまいります。

袋打ちコードとキーソケット