調査業務における体験談 vol.84中性線と対地間の電圧が!?
香川支部 坂出事業所 北山 一仁
ある夏の日、郊外の住宅と商店が点在している地区で定期調査をしていた時のことです。
お客さまの事務所を訪問し、いつものように挨拶を終え、電力メーター付近で漏れ電流を測定したところ基準値を大きく上回る15mAの値が出ました。これは完全に漏電しているのではないかと推察し、事務所は営業中でしたがご理解をいただき、停電による絶縁測定をしたところ結果は20MΩと良好でした。
次に、一般のご家庭を訪問し漏れ電流を測定すると、また、基準値を大きく上回る値の10mAでした。電灯回路の線間電圧は正常でしたが、中性線と対地間が170Vと異常な電圧でした。「100Vを超えているので、電灯ではなくどこかの動力回路から漏電しているのでは」と考えましたが、この地区で調査したのは電灯回路のみでしたので、特定するのは大がかりになると判断し、事業所に連絡して応援を呼ぶこととしました。手分けして漏電箇所を探した結果、ある店舗の動力回路で2.5Aの漏れ電流が流れていることが判明しました。お店の責任者である社長さんは不在でしたが、総務担当の方が対応してくれました。現場は引き込み小柱で電気を受け、そこから地中埋設で店舗の工場内へ引き込まれていました。
工場内の分電盤を確認すると、メインブレーカーに漏電ブレーカーはなく、二次側の分岐ブレーカーに漏電ブレーカーが取り付けされていました。しかし、メインブレーカーの一次側から分岐していた回路には漏電ブレーカーが取り付けされておらず、停電して絶縁抵抗測定を実施した結果、その分岐回路が不良で0MΩでした。
すぐにお客さまに状況を説明し、電気工事店へ漏電箇所の改修と漏電ブレーカー取り付けの手配を依頼しました。電気工事店の方がすぐに駆け付け、状況を説明し不良回路のブレーカーを開放後「絶縁不良」の表示シールを貼り、その日は現場を後にしました。
後日、お客さまから漏電箇所の改修と漏電ブレーカーの取り付けが完了したとの連絡があり、再度、現場を訪れ再調査を実施した結果は良好でした。漏電していたのは動力の食洗器だったとのことです。
今回の事案では、動力回路の完全地絡のため感電事故が起こっても不思議ではない状況でしたので、何の事故もなく漏電箇所が改修されたことに安堵しました。
反省点としては、最初に異常値を確認した事務所での調査の際に、電圧異常が発見できていればと思いました。
