定期調査時の体験談

調査業務における体験談 vol.49お客さまとの対話にヒントを見つけて

今治事業所 阿部 厚志

調査業務を始めて1年が経過しました。以前、保安業務に従事していた時は、お客さまと契約を交わしている関係上、訪問、挨拶、作業、報告までご理解していただいたうえで、行うことができました。しかし、調査業務については、電力会社からの委託を受けて行っておりますので、突然の訪問となることもあります。

最近、ある町で行った調査でのことです。住宅の合間に倉庫のような建物がありました。そこには郵便受けも呼び鈴もなかったので「たぶん無人の倉庫だろう、後で電力に確認してからお客さまに連絡することにしよう」と、倉庫らしき建物を後回しにして、その隣の住宅に声を掛けようとすると、「うちには、調査はこないのか」と身なりの良い男性に呼び止められました。聞けばその倉庫と勘違いした建物の住人でした。そこで「電気の安全調査のお知らせ」に巡回していることをお伝えして、ご理解していただいたうえで調査を開始しました。

漏れ電流測定したところ、Io異常が出ました。停電しての絶縁測定が必要です。お客さまに、停電しても支障がないことを確認したうえで、停電による調査を行いました。心配したものの、絶縁状態には異常はありませんでした。結果報告の際、お客さまに「何か電気にかかわることで、変わったことはありませんか」と、おたずねしたところ「居間のコンセントで時々アイロンを使うのだが、使えない時がある」とのことでした。

そこで了解を得て、居間のコンセントを確認したところ異常は見当たりませんでした。「これは、分電盤に不具合があるのではないか」と考え、改めて12回路あるブレーカの目視点検を行い、また、サーモガン(放射温度計)を使用して過熱が無いかを検査しました。すると1個のブレーカとケーブルの接続点が過熱しているのを発見しました。再度、停電によりブレーカ全ての増し締めを実施しました。そして、お客さま立ち会いのもと居間のコンセントで実際にアイロンが使えるかどうかを確認していただきました。すると、お客さまから「ありがとう、原因がわかって安心した」とのお言葉をいただきました。

私の経験からして調査業務は、高圧回路を扱わないため危険度は低いと思っていました。それは、自分本位の解釈であり、お客さまにとっては高圧も低圧も関係ありません。お客さまとの対話の中には、電気故障となるようなヒントが隠されています。これからも、点検と対話に安全を積み重ねる業務を行ってまいります。