定期調査時の体験談

調査業務における体験談 vol.38地道な調査が功を奏して

高知支部 調査サービス課 調査員 谷脇 英人

市内にある二棟続きの平屋住宅でのことです。当日の午前中に訪問しましたが、あいにくお留守で「電気設備の安全調査のお知らせ」リーフレットをポストに入れ、その場を後にしました。しかし昼食後、そのお客さまから「帰宅したので調査をして貰いたい」と連絡をいただいたので、早速調査に伺いました。

電力メーター付近で漏れ電流を計測したところ、1.5mAを確認しました。また抵抗分漏れ電流測定ユニット(Ior)で計測しましたが、値に変化はありません。お客さまに事情を説明した後、承諾をいただき、屋内の分電盤で再度Ioを測定すると、1カ所のみ1mAを超える分岐回路がありました。古い銘板にはただ「コンセント」と表記されているだけでした。

とりあえずお客さまに問診しましたが、「特に変わったことはない」とのことでした。漏れ電流オーバーしている分岐回路を切り離し、特定部位を探したところ、分電盤のある脱衣場とトイレの電灯・コンセント回路に行き当たりました。コンセントに差し込んでいる洗濯機やトイレの暖房便座等をすべて切り離しても測定値に変化はありません。ただ脱衣場のブラケット照明のSWを入り切りする度に、ブーンと耳に付く大きな異音が発生し、見かけ上もかなりの年代物と判断しました。灯具を外し、線の状態も見ましたが外見だけではわかりません。蛍光灯具なので安定器も疑われます。

また、借家である二棟続きの家屋だから電気配線の増設や改修に関わる工事も調査の対象として考慮に入れなければなりません。そこで、外の電気設備にも目を向けてみました。すると、同回路には玄関近くにある外コンセントも入線されているではありませんか。そこには浄化槽のブロアと放流ポンプの2系統が繋がれており、当該機器のうち放流ポンプのNo.1を、回路より切り離すとIo値が0.23mAまで下降しました。ポンプ本体の絶縁抵抗は0.01MΩです。これが絶縁不良の原因と判明しました。

居住者の方にお聞きすると、すぐそばに大家さんが住んでおられるとのことでした。そこで、大家さんにも事情を説明させていただくと、即日メンテナンス業者に連絡していただき、翌日の午前中には、ポンプの交換をしてもらうことができました。私もその日、現場に立ち会い、絶縁不良に至った経緯を業者から聞いたところ、「吸い込み口に何かが絡まり吸引不能となり、端子BOX下部まで水かさが増え防水処置は施していたものの長く浸かっていた為に、水が浸入し漏電状態になっていた」との事でした。

今回の事例では、漏電箇所をさがす時、最初の段階で先入観を持ってしまうと行き詰まることもあるので、特定回路のみにこだわらず、屋内外に範囲を拡げ配線・機器を順を追って地道に調べ上げたことが、功を奏しました。お客さまにも喜んでいただき、また屋内点検の重要性も理解していただくことができました。