定期調査時の体験談

調査業務における体験談 vol.37お客さまの財産を守る安全調査

愛媛支部 調査サービス課 調査員 森本 辰秀

私は、まだこの業務に就いて2年あまりで、まだまだお客さまとお話しするのが、不得手です。
この間のことです。それは、佐田岬半島の運送会社のお客さまでのこと。
従業員の方に挨拶を済ませ、定期調査の了解をいただき、点検を開始しました。

引き込み口配線の外観点検には異常がないことを確認した後、屋外の電力メーターのところで、漏えい電流測定をしてみると、規定値の1mAに対して異常に多い8mAが表示されました。直ぐに従業員の方に事情を説明すると、「本社の社長が居るから、そちらに行って説明してくれないか」とのことです。私も「社長にお会いして、納得していただけるだけの話しができるだろうか」と不安でしたが、このまま放っておく訳にもいかず、「協会の使命」「電気の保安、安全」と自分自身に言い聞かせながら、社長を訪ねました。

「今まで、電気のことで、困ったことはないが、潮風の当たる鉄骨の建物だから、一度立ち会うよ」と快く言われたので、現場まで社長に同行していただきました。

停電して、分電盤での各回路の絶縁状態を測定したところ、測定値は、10MΩで異常は、ありませんでした。しかし、分電盤の主ブレーカーより電源側に不良があるのではないかと疑い、幹線の絶縁状態を調べることにしました。電力量メーターの2次側電線を端子から外し、メーター2次側から主ブレーカーまでの幹線を絶縁測定したところ、赤色電線(赤相)50MΩ、黒色電線(黒相)50MΩ、白色電線(白相)0MΩ、でした。白色電線(白相)が漏電していました。

社長は、一連の調査のようすを温かく見守っておられましたが、漏電の報告を聞くと、改修の必要性を認識され、直ぐに電気工事業者を呼び、改修工事が始まりました。スレートの壁に打ち込んだ釘が、電線を傷つけたのが原因でした。

潮風の当たる鉄筋の建物であり、多くの従業員の出入りもあるところなので、感電事故のような大事故につながる恐れもありました。すぐに改修していただけたことに安堵いたしました。社長も「定期調査のおかげで、大事になる前に発見でき、良かったよ」と喜んでおられました。

今回の調査では、お忙しい中、社長に現場建物まで同行していただき、事なきを得ることができました。調査業務に従事していると、時には不審者扱いされたり、相手にされずに門前払いされたりすることもあります。そんな時には、運送会社の社長さんの喜ぶお顔を想い出しながら、お客さまの大事な財産を守る重要な点検調査であることを説明して、安全調査へのご理解をお願いしています。どうか電気設備の点検・調査に伺った折には、お客さま宅内の分電盤の点検などへのご協力をお願いいたします。