電気事故に学ぼう83保守不備(自然劣化)による波及事故
2022年度に四国管内で発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、事業用電気工作物の設置者から45件の報告を受けています(2023年1月1日現在)。そのうち、波及事故が8件発生しています。
波及事故とは、高圧受電設備などで起きた事故が原因で、電力会社の配電線に接続されている住宅、病院、工場および交通信号システムなどの広範囲に停電が広がる事故をいいます。波及事故は他者に対し様々な被害を与える、社会的に大きな影響を及ぼす重大な事故です。
過去5年間(2017年度~2021年度)においても、四国管内で30件の波及事故が発生しています。
今回は、保守不備(自然劣化)による波及事故事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 需要設備 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 10月 |
供給支障電力・時間 | 136kW・58分 |
事故発生の電気工作物 | 引込用高圧ケーブル (CVT)1996年製 |
事故原因 | 保守不備(自然劣化) |
経験年数・年齢 | — |
天候 | 晴 |
事故概要
引込用高圧ケーブル(CVT)にて地絡が発生し、高圧地絡方向継電器の慣性特性時限以下での間欠地絡により絶縁破壊に至った(推定)ことから、高圧区分開閉器が開放せず、波及事故に至った。
(停電戸数113戸)
事故原因
調査の結果、引込用高圧ケーブルの絶縁不良が確認された。外観点検を実施したところ、構内柱のケーブルヘッドより20m程度の位置において、外装に直径1mm程度の穴が開いており、穴が開いている位置の外装を剥ぎ取ると、押さえテープに焼損跡(黒点)が確認された。
年次点検での絶縁抵抗測定値が良好であったことから、それ以降に引込用高圧ケーブル絶縁物の架橋ポリエチレンに水トリーが生じ、絶縁が徐々に低下していたことが原因と考えられる。
再発防止対策
- 引込用高圧ケーブルの交換(CVT、2020年製)
注意喚起
近年、比較的新しい引込用高圧ケーブルが、地中埋設部で水トリー現象により絶縁破壊し、電力会社に供給支障を与えるという波及事故が増加しています。
高圧ケーブルについては、更新推奨時期に満たなくても劣化の兆候が確認された場合は速やかに更新すること、また、更新の際は水トリー現象に強いE-Eタイプ(外部半導電層が押出成形)を採用することを推奨します。
詳細は経済産業省ウェブサイトをご確認ください。
◉更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起
(経済産業省ウェブサイト)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/06/20210616-1.html
事故のあった引込用高圧ケーブル
自家用電気工作物設置者の皆さまへ
自家用設備に電気事故が発生すると、生産活動に大きな痛手を被るばかりでなく、万一、波及事故を起こすと近隣の需要家に停電などにより多大な損害を与えてしまいます。
波及事故の原因として、例年、保守不備(自然劣化)によるものが多く発生しています。これらは、計画的な設備更新を行うことで事故を防ぐことができる事案です。電気主任技術者から電気設備の更新や補修に関する報告を受けた場合には、放置することなく早期に改善を実施するようお願いします。
電気主任技術者におかれましては、確実な日々の点検の実施と、各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、保守不備による事故を未然に防いでいただきますようお願いします。
適切な保守点検とともに、必要に応じて機器単位または全体的な更新を行い波及事故を防ぎましょう。
2022年度四国管内電気事故発生件数
(2023年1月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
---|---|
感電死傷事故 | 5 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 1 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 (うち太陽電池発電所の逆変換装置によるもの) |
30 (10) |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 8 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 1 |
計 | 45 |