電気事故に学ぼう74保守不備(自然劣化)による波及事故
中国四国産業保安監督部四国支部管内における電気関係報告規則第3条に基づく事故については、2019年11月1日現在、28件発生しており、うち波及事故は3件発生しています。
波及事故とは高圧受電設備などで起きた事故が原因で、電力会社の配電線に接続されている住宅、病院、工場および交通信号システムなどの広範囲に停電が広がる事故をいいます。波及事故は他者に対し様々な被害を与える社会的に大きな影響を及ぼす重大な事故です。
四国支部管内における過去5年間(2014〜2018年度)に発生した波及事故件数は39件で、そのうち保守不備(自然劣化)を原因とするものが13件発生しています。
今回は、保守不備(自然劣化)による波及事故事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 需要設備 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 5月 |
供給支障電力・時間 | 1,680kW 38分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧区分開閉器 |
事故原因 | 保守不備(自然劣化) |
経験年数・年齢 | - |
天候 | 小雨 |
事故概要
需要設備構内の高圧区分開閉器の内部に雨水が浸入し、内部短絡事故が発生。電力会社配電線の短絡・地絡継電器動作により、波及事故となった。
事故発生3年前の年次点検以降および2カ月前の月次点検時には、受・変電設備高圧機器の経年劣化を指摘され、高圧区分開閉器の交換推奨の指導を受けていた。
事故原因
高圧区分開閉器は絶縁ガス入りの密閉式(2001年製造G付PGS7.2kV200A LA内蔵)であったが、製造年から17年経過し開閉器が劣化して密閉されていた絶縁ガスが抜け、開閉器内部に雨水が浸入した。そのため開閉器内部で絶縁破壊を起こし、内部電源側にて接地短絡事故に至った。
○事故のあった高圧区分開閉器
○高圧区分開閉器内部電源側で短絡による溶解跡、雨水侵入の痕跡有
再発防止対策
- 新品の高圧区分開閉器(G付PAS)に取り替え。
- 計画的な機器の取り替えに努める。
〈自家用電気工作物設置者の皆さまへ〉
自家用設備に電気事故が発生すると、生産活動に大きな痛手を被るばかりでなく、万一、波及事故を起こすと近隣の需要家に停電などにより多大な損害を与えてしまいます。
主任技術者におかれましては、確実な日々の点検の実施と、各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、保守不備による事故を未然に防いでいただきますようお願いします。適切な保守点検とともに必要に応じて機器単位または全体的な更新を行い、波及事故を防ぎましょう。
2019年度四国管内電気事故発生件数
(2019年11月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
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感電死傷事故 | 0 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 | 23 |
発電支障事故 | 1 |
供給支障事故 | 1 |
波及事故 | 3 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 0 |
計 | 28 |
高圧機器の更新推奨時期
(更新推奨年数は、日本電機工業会資料より抜粋)