電気事故に学ぼう73保安不備(保守不完全)による波及事故
中国四国産業保安監督部四国支部管内における電気関係報告規則第3条に基づく事故については、2019年9月1日現在、21件発生しており、うち波及事故は3件発生しています。
波及事故とは高圧受電設備などで起きた事故が原因で、電力会社の配電線に接続されている住宅、病院、工場および交通信号システムなどの広範囲に停電が広がる事故をいいます。波及事故は他者に対し様々な被害を与える社会的に大きな影響を及ぼす重大な事故です。
四国支部管内における過去5年間(2014〜2018年度)に発生した波及事故件数は、39件で、そのうち保守不備(保守不完全)を原因とするものが5件発生しています。
今回は、保守不備(保守不完全)による波及事故事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 太陽電池発電所 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 8月 |
供給支障電力・時間 | 供給支障無し |
事故発生の電気工作物 | 高圧CVケーブル |
事故原因 | 保守不備(保守不完全) |
経験年数・年齢 | - |
天候 | 晴れ |
事故概要
構内柱上高圧ケーブル端末上部に竹が接触したことで地絡・短絡事故が発生。電力会社の柱上不感帯遮断器(OB)が過電流により動作し、波及事故となった。ただし、電力会社の遮断器以下には当該発電所のみ存在したため供給支障は発生していない。
事故発生2カ月前の月次点検時には異常なしとの結果だった。
事故原因
構内柱周辺の竹の繁茂により、CVケーブル端末部に接触した。(写真1)
OBが設置されている箇所では、PAS-VCB間で地絡・短絡事故が発生すると、PASで短絡電流を切り離す能力が無いために、まずOBが動作し、停電したことによりPASを動作させる構成になっている。通常はこのあと電力会社の遮断器が自動で再閉路成功の確認を行うが、OBには再閉路を確認する機構がないため波及事故となった。
再発防止対策
- 構内柱周辺の竹の伐採、防草シート敷設。(写真2)
〈自家用電気工作物設置者の皆さまへ〉
太陽電池発電設備にとって植生の管理は重要な管理項目です。一般社団法人日本電機工業会と太陽光発電協会が2016年12月28日に制定した「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では、太陽電池アレイでの管理項目として
- ・設置時に恒久的に除去することが、植生管理の理想的な方法である。
- ・検査時に、植生の成長量を書き記し、写真を使って記録する。
といったような点などを挙げています。太陽電池発電所はほとんどの箇所で保守担当者が常駐しておらず、点検頻度も1カ月以上の間隔となっている事業場がほとんどであることから、構内柱やキュービクルなどについても植生管理には同様の考えをとる必要があります。
設置者の皆さまにおかれましては、電気工作物の環境整備についてもしっかりした自主保安体制を構築いただけますようお願いします。
2019年度四国管内電気事故発生件数
(2019年9月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
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感電死傷事故 | 0 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 | 17 |
発電支障事故 | 1 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 3 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 0 |
計 | 21 |