電気事故に学ぼう71故意過失(作業者の過失)および保守不備(保守不完全)による波及事故
平成30年度における四国支部管内の事故は、12月31日現在、31件発生しており、波及事故については6件発生しています。そのうち故意過失(作業者の過失)を原因とするものが1件、保守不備(保守不完全)を原因とするものが2件発生しています。
四国支部管内における過去5年間(平成25〜29年度)に発生した波及事故件数は、41件で、そのうち故意過失(作業者の過失)を原因とするものが3件、保守不備(保守不完全)を原因とするものが4件発生しています。
今回は、故意過失(作業者の過失)および保守不備(保守不完全)による波及事故事例を紹介します。
資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
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設置場所 | 工場 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 選任 |
事故発生月 | 11月 |
供給支障電力・時間 | 約1,624kW 36分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧ケーブル |
事故原因 | 故意過失(作業者の過失) 保守不備(保守不完全) |
経験年数・年齢 | 46年・70歳 |
天候 | 晴れ |
事故概要
事業場内の高圧ケーブルが地絡したことにより地絡保護継電器(DGR)が動作し、区分開閉器(PAS)を開放したため事業場内が停電した(この時点では事業場内のみの停電)。主任技術者は安全のために断路器(DS)・受電用遮断器(VCB)を開放して調査を実施した。事故点は特定できなかったが、DGRの誤動作の可能性を考慮し、DGRをリセットしてPASを再投入することにした。DGRの電源はPASに内蔵されているタイプと認識していたが、実際は変圧器二次側から供給されているタイプだったため、DGRは動作せず波及事故となった。調査の結果、高圧ケーブルの絶縁破壊が確認され、高圧ケーブルの経年劣化により地絡したと推定される。
事故原因
- 事故点を特定しないまま、電力会社に確認せずにPASの再投入を行った。
- 保安規程で定める月次点検を行っていなかった。
- 高圧ケーブル敷設後26年、引込PAS設置後35年経過していた。
再発防止対策
- PAS動作時は電力会社に連絡し、独断で再投入は行わない。
- 保安規程通りに月次点検を行う。
- 更新推奨時期を踏まえて計画的に高圧ケーブルおよびPASの更新を行う。
今回の波及事故は、事業場内停電時に主任技術者が復旧対応を誤ったため起こりました。早期に停電を回復しようと、事故点の特定ができていない状態で、また図面等でPASの仕様を確認しない状態でPASを再投入したため、波及事故となりました。操業中の工場にあっては停電により生産が止まることから、現場からの早期復旧の声が大きいかと思われます。そのような場合こそ、一つ一つ確認して確実に復旧に努め、冷静な対応をお願いします。
また高圧ケーブル、PASにおいては設置からかなりの年数が経過しており、保安規定で定められた月次点検もできていない状態でした。主任技術者におかれましては、確実な日々の点検の実施と、各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、こうした状況を未然に防いでいただきますようお願いします
設置者の皆さまにおかれましては主任技術者が確実に保安業務を遂行できる体制の構築と計画的な設備更新に努めていただきますようお願いします。電気の保安を確保しなければこうした事故に繋がり、生産に影響をおよぼします。また、従業員が被災する可能性や、事業場周辺の住民、事業者へ損害を与える可能性もあります。従業員の安全確保と安定的な電力供給のために電気の安全に努めていただきますようお願いします。
平成30年度四国管内電気事故発生件数
(平成30年12月31日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
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感電死傷事故 | 0 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 | 24 |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 6 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 1 |
計 | 31 |