電気事故に学ぼう

電気事故に学ぼう65作業準備不良・作業方法不良による作業者の感電死傷事故

平成29年度の四国支部管内における感電死傷事故については、9月30日現在、1件発生しています。
四国支部管内における過去5年間(平成24〜28年度)に発生した感電死傷事故(計11件)の主な原因は、被害者の過失(6件)で、ついで、作業方法不良(4件)、作業準備不良(3件)となっています。(※)
今回は、作業準備不良・作業方法不良による作業者の感電死傷事故事例を紹介します。
※1件の事故が2以上の原因による場合があるため、原因件数の累計と事故件数の累計は異なります。

資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課

感電死傷事故

使用電圧 110kV
設置場所 工場
事故点の電圧 6.6kV
主任技術者の選任形態 専任
事故発生月 4月
供給支障電力・時間 -
事故発生の電気工作物 高圧配電盤
事故原因 作業準備不良
作業方法不良
経験年数・年齢 -
天候

事故概要

作業体制- 
A社:発注元(設置者)
B社:作業元請会社
C社:作業2次請会社
D社:3次請作業実施会社

主任技術者は、作業の5日前の全停電打合せ時に、事故当日は、高圧配電盤2次側は停電しているが、高圧配電盤1次側は事故前日から充電することを、B社、C社責任者に直接打合せして伝えていた。
事故当日、変電所は前日までの全停電作業の片付けのため、入口の施錠はしていなかったが、変電所内の全ての盤は、前日に主任技術者およびA社係員が施錠の確認をしていた。
D社は予定していた電気室でのケーブル取込・端末処理の作業が早く終わったので、D社作業者AからB社責任者へ、変電所で雨養生して作業する旨連絡があった。B社責任者は気を付けて作業するように返事した。この作業変更については、C社責任者は聞いておらず、主任技術者にも連絡はなかった。
D社の作業者4名は、変電所に到着して、雨の中、作業服(綿)の上に、ビニール製雨カッパと安全ゴム長靴を着用して、高圧配電盤前をブルーシートで覆い雨養生した。
事故発生の約30分前に、D社責任者からC社責任者へ、ケーブルの接続端子が欲しいという電話があり、C社責任者は接続端子の置き場所を伝えて、高圧配電盤の接続部を触るのであれば検電するように指示した。
その後、D社作業者Aが高圧配電盤を開錠した。検電が行われないまま、D社作業者AとBの2名は、盤内の接続端子からピット下までの寸法を測り、ピットに入ってケーブルを切断する作業をした。D社責任者と被災者は、地上で高圧配電盤内のケーブルブラケットの位置調整をした。
(高圧配電盤から10m足らずの場所で、特高変圧器が励磁音をたてていたが、高圧配電盤は前日に設置された新設盤であったため、停電していると思い込んでいた。)
続いて、高圧ケーブルを高圧配電盤に取込む作業を、ピット内に作業者A、Bの2名、地上でケーブル先端部に被災者、被災者の後方にD社責任者(ケーブルには触れず監視)の配置で、開始した。
被災者が、高圧配電盤に頭と片足を半身で盤内に入れた状態で、濡れた雨カッパを着たまま右手で高圧ケーブルを持ち上げた際、右手甲が充電部の1次母線に接近し、右手甲から電気が入り右肩に抜け感電し、閃光と大きな音とともに後ろへ倒れた。D社責任者が救急車を要請して、被災者は病院へ搬送された。

事故原因

  • D社は、B社と話したことで、C社へ連絡せずに作業した。
  • 主任技術者に連絡せずに、高圧配電盤の開錠を、D社作業者が行った。
    (片付け作業等で、変電所入口は開放されていた。)
  • D社作業者は、作業前に検電をしなかった。
    (C社指示書には、検電励行の記載があった。)
  • D社作業者は、新設盤であったので、高圧配電盤が停電していると思い込んでいた。
  • D社作業者は、作業場所が電気室から変電所に変わったのに、KYM(危険予知ミーティング)を実施しなかった。
  • D社作業者は、充電部近接にもかかわらず、充電部の防護を行っていなかった。

再発防止対策

  • 作業変更などの連絡は、関係者および主任技術者に報告して指示を受ける。
  • 変電所に立ち入る作業や、盤の開錠については、主任技術者の許可を受ける。
  • いかなる場合も、作業前は必ず検電を実施する。
  • 作業対象盤で、充電中の盤については、通電中表示を取り付ける。
  • 作業場所が変われば、再度KYMを実施するように、徹底させる。
  • 充電部が近接する作業では、主任技術者の確認を取り、充電部の防護を行って作業する。

平成29年度四国管内電気事故発生件数

(平成30年9月30日現在)

事故種別 事故発生件数
感電死傷事故 1
感電以外の死傷事故 0
電気火災事故 0
他物損傷・機能被害事故 0
主要電気工作物破損事故 20
発電支障事故 0
供給支障事故 0
波及事故 3
ダム異常放流事故 0
社会的に影響を及ぼした事故 0
24