電気事故に学ぼう86保守不備(自然劣化)による波及事故
2022年度に四国管内で発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、事業用電気工作物の設置者から52件の報告を受けています。そのうち、波及事故は8件発生しています。
波及事故とは、高圧受電設備などで起きた事故が原因で、電力会社の配電線に接続されている住宅、病院、工場および交通信号システムなどの広範囲に停電が広がる事故をいいます。波及事故は他者に対し様々な被害を与える、社会的に大きな影響を及ぼす重大な事故です。
過去10年間(2013~2022年度)においても、四国管内で74件の波及事故が発生しています。
今回は、保守不備(自然劣化)による波及事故事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
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設置場所 | 需要設備 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 6月 |
供給支障電力・時間 | 供給支障電力 863kW 時間 2時間10分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧ガス負荷開閉器(PGS)1995年製 |
事故原因 | 保守不備(自然劣化) |
経験年数・年齢 | — |
天候 | 晴 |
事故概要
電力会社の配電線が自動遮断し、波及事故が発生した。調査の結果、高圧ガス負荷開閉器(PGS)の不良が確認された。波及事故発生から2時間10分後、PGS一次側切り離しにより、当該事業場を除き送電が完了した。
事故原因
当該事業場の高圧ガス負荷開閉器(PGS)は、設置から27年が経っており、経年劣化によりPGS内部に充填されていた絶縁用のガスが抜けて空気に入れ替わり、さらに、内部に雨水が浸入し絶縁が低下、内部で地絡が発生し波及事故に至ったものと推定される。
再発防止対策
- 高圧ガス負荷開閉器を交換
負荷開閉器の内部に雨水が浸入
高圧ガス負荷開閉器
※事例の場所以外の参考写真です。
自家用電気工作物設置者の皆さまへ
自家用設備に電気事故が発生すると、生産活動に大きな痛手を被るばかりでなく、万一、波及事故を起こすと停電などにより、近隣の需要家に多大な損害を与えてしまいます。
高圧ガス負荷開閉器については、製造業者が交換を呼びかけている製品もあります。また、製造業者では更新推奨時期についても公表しております。電気事故防止のため、製造業者から発信されている情報も意識し確認するようにしましょう。
主任技術者におかれましては、確実な日々の点検の実施と、各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、保守不備による事故の未然防止に努めましょう。適切な保守点検とともに、必要に応じて機器単位または全体的な更新を行い、波及事故を防ぎましょう。