電気事故に学ぼう81保守不備(自然劣化)による波及事故
2021年度に四国管内で発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、事業用電気工作物の設置者から31件報告を受けています(2022年2月1日現在)。そのうち、波及事故が3件発生しています。
波及事故とは、高圧受電設備などで起きた事故が原因で、電力会社の配電線に接続されている住宅、病院、工場および交通信号システムなどの広範囲に停電が広がる事故をいいます。波及事故は他者に対し様々な被害を与える、社会的に大きな影響を及ぼす重大な事故です。
過去5年間(2016年度~2020年度)においても、四国管内で30件波及事故が発生しています。
今回は、保守不備(自然劣化)による波及事故事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 需要設備 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 10月 |
供給支障電力・時間 | 1,328kW・1時間2分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧気中負荷開閉器(PAS) 2007年製 |
事故原因 | 保守不備(自然劣化) |
経験年数・年齢 | — |
天候 | 晴れ |
事故概要
電力会社の配電線が自動遮断し、波及事故が発生した。調査の結果、高圧気中負荷開閉器(PAS)の不良が確認された。波及事故発生から1時間2分後、高圧気中負荷開閉器(PAS)一次側切り離しにより、当該事業場を除き送電が完了した。
事故原因
当該事業場は海岸部付近に位置しており、塩害により高圧気中負荷開閉器(PAS)の腐食が進行していたと推定される。腐食が進行していた箇所から高圧気中負荷開閉器(PAS)内に雨水が侵入したため、高圧地絡事故に至った。
また、高圧気中負荷開閉器(PAS)に侵入した雨水により、地絡継電器が劣化不良となったため、切り離しができず波及事故に至った。
再発防止対策
- 高圧気中負荷開閉器(PAS)の交換
事故のあった高圧気中負荷開閉器(PAS)
自家用電気工作物設置者の皆さまへ
自家用設備に電気事故が発生すると、生産活動に大きな痛手を被るばかりでなく、万一、波及事故を起こすと近隣の需要家に停電などにより多大な損害を与えてしまいます。今回の事故事例のように、事業場が海岸部付近に位置する場合は、塩害による腐食がないかなど、注意して日々の点検を行いましょう。
また、初めての作業や手順を変更した作業には、作業安全の盲点が潜んでいる場合が多々あります。作業に当たっては、思い込みによる作業の抜け防止の観点からも、主任技術者を含めた作業前の打ち合わせを行い、作業手順の確認をはじめ、作業に潜む危険の予測、危険に対する対策を共有し、作業中の指さし呼称などをとおして、お互いの意思疎通を図ってください。
主任技術者におかれましては、確実な日々の点検の実施と、各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、保守不備による事故を未然に防いでいただきますようお願いします。適切な保守点検とともに、必要に応じて機器単位または全体的な更新を行い、波及事故を防ぎましょう。
2021年度四国管内電気事故発生件数
(2022年2月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
---|---|
感電死傷事故 | 1 |
感電以外の死傷事故 | 1 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 (うち太陽電池発電所の逆変換装置によるもの) |
26 (12) |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 3 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 0 |
計 | 31 |